PROLOGUE
背景
長年放置された木造家屋
かつては1階に数人並べるカウンターを備えた居酒屋、2階が
居住スペースとなっている昔ながらの兼用住宅でした。
そこが廃業後約10年、住民もいなくなり長年放置されていました。
初めて訪ねた時、畳から草が育ち、雨漏りをしていました。
この建物は破損している箇所は多かったものの、まだ使用可能な
柱・梁があることも見つけ、既存構造や意匠材を生かした建物として蘇らせました。
About Us
船橋隣学について
再び人が集う場へ
建物を再建するだけでなく、この先も永く使われ続けるため、
空間の利用方法もセットで考案し、我々が発案したのが「ワーキングスペース」と「バイク駐車場」の併設という新たな組み合わせでした。駅から少し離れた住宅街の一角に位置するという事は、近隣の方々にとって自分たちの家に隣接する空間という利点になります。
「駅に行けば喫茶店はあるが、もっと身近にあって欲しい」
「小さくても気兼ねなく使える書斎的空間が欲しい」
「家とは違う、オフィスライクなワークスペースが欲しい」
そんな家に隣接した場に対するニーズに応えたいと思いました。
CONCEPT
コンセプト
街に開いた大窓
本改修で2階をワーキングスペース(店舗)、1階を駐車場へ改修前の店舗エリアとの逆転を行いました。従来のプランは住宅空間であったことから細かく間仕切られていたため、まずは既存躯体を整理・補強。もともと正面の店舗入り口部分が半層程度低く、2階の居室が奥に引っ込んでいました。その高さ関係をそのまま活かし、2階へ利用者を招き入れるべく「新規性」と「親しみ」を感じさせるショーケースのようなファサードをデザインすることにしました。とはいえあまり高価なものは避け、実は通常住宅用のサッシを用いています。サッシの梁が目立たないようスパングルジングで覆い、あたかも大きな1枚ガラスに見せる工夫を行っています。表から見る人にとって「安心感」や「興味」を抱いてもらえるように、大きなガラス窓によって2階の視認性を高めました。
DESIGN
デザイン
古材と新材を織り交ぜる
建物の柱梁のように「使えるものを見直す」という視点でデザイン素材の選定にも反映しています。例えば、「銀メッキ(スパングルジング)」の利用。主に土木の分野では昔から使われているある意味で「昔ながら」の素材を、本物件ではファサードのサッシ枠と、外扉に用いています。また、什器には「コクヨ椅子」の現在販売されている商品のなかで、最も往年の規格品を選定しました。お菓子のパッケージやカメラといった電化製品に見られるような「復刻版」さながら、これまで建築分野では扱われなかった規格外の素材に光を充てデザインを施す。あるいは古き良きデザインを見直すことで「昔ながら」を継承しながら「新鮮さ」へ生まれ変わらせています。